あらいけんた君がくれた幸せ

昼食を行きつけの店ですませて、瓢箪山駅に近づくと粉雪が、舞い降りてきた。空を見上げるとブルースカイの空は拡がり、ポカリと白い雲の塊がある。
粉雪はまばらに降りてきて私の頬に伝わる。ふと涙が零れそうな痛みを私の胸を射したが、駅のホームの階段を上り、ホームに降りると駅員のアナウンスが響く。

“乗降されるお客様はホームにご注意ください”

最近、私がホームに佇むとアナウンスが響くのは偶然だろうかと思い、私の姿が、アナウンス室からみえると寂しげに見えるのだろうかと考えてしまうこともある。電車の普通列車が来たので、乗り込むと電車の中は小学生の賑やかな声が聞こえて来た。

隣り合わせた小学生に声をかけると、遠足ではなく社会見学だと元気な言葉を返してくれた子どもたちは枚岡駅で整列をして降りて行き、私は、額田駅で降りて上方に昇らず駅のホームに沿う道を歩き出したが、自分のこれからの生きていく道筋を如何にすべきかと考えると暗く見えない道に胸がふさがる思いがよぎった。

坂道を登り始めた時、私に、こんにちはと声をかけてくれた少年がいた。

「あらつ!私を知っているの?」
「知っているよ、ぼくのお菓子を上げたでしょ?」
「私にお菓子をくれたの?」
「そうだよ、僕のお菓子を友達にあげたのを、おばさんにその子はあげたんだよ。」

そう、思い出しました。私の住む場所から近いところに小学生の少年、少女の家が並び、その家の子どもたちが学校の帰宅時、お家に入る前に女の子も男の子もおやつを食べたり、交換したりするのを見たので、私は勝手に仲間に入りこみ、「わたしにもちょうだい」とおねだりすると仲間うちでは一番高学年の子どもが笑いながら私にくれたのです。思い出しました。

日曜日、今日は、その時にお世話になったあらいけんた君にお返しのお菓子を持って行こうと考えていました。家の前に二度行ったのだが、留守のようで、時間をおいて再び行き声を張り上げて

「ここのお家にあらいけんた君っていませんか?」

と叫ぶと男の子が二階の窓から顔を出して降りてきてくれた。

「この間ね。私にお菓子をくれたでしょう? だからお返しに来たのよ」

と言ってお菓子を渡そうとすると、

「一つだけでいいです」

と断るので私は、

「用意したお菓子はお雛祭りの女の子用の中身になっちゃったけれど受け取ってくれたら嬉しいな」

と伝えると一つだけでいいですと何度も繰り返す子どものお行儀の良さに私はなんとお行儀のよい躾をされているお母様だろうと感心した。そして、彼のお母様は子どもの話を聞いていらしたのかなと改めて私は母親の子どもに対する細やかな部分まで聞くことを家庭の中でされているのだろうと思い、家庭内での親と子の幹をしっかり結ぼれている親子の在りかたを考えさせられた。

礼儀正しい男の子に再度、お願いしてお菓子の袋を受け取って貰えた私の心は、温かく安らぎを覚えた日曜日の午後になりました。けんた君ありがとう。
お母様もありがとうございました。

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