二つ眼の幸せ

 出会った女性は、天王寺区の鶴橋から上本町に上る路上である。耳に嵌めていたイヤリングのキャッチャーはどうしたことか片耳の分が外れない。キャッチャーは上本町近鉄ユフラビル2階にあるアクセサリー売り場で購入したのだが、片耳だけ刺さったまま外れず二日経て仕方なく購入店に行くと店員さんも心配して天王寺区にある「おおた皮膚科」を探してくれた紙片を持ち「おおた皮膚科」を求めてスマホを頼りにドンドン進み鶴橋駅まで行ってしまった。

 歩き疲れて、何度か入ったことのある鶴橋駅に近い喫茶店で一休みしてまた歩き始めたが、上本町から歩いてきた向かい側の道筋に「おおた皮膚科」があるようである。

「高齢者の一途な思い込みは、時には失敗を自ら手に入れることになる」目安だったコンビニは見つかり中年の女性に聞くと「わからない」という返事。次に若い女性が出て来たので聞くとすぐ歩き始めた。

「あのーおおた皮膚科ってご存じないですか」

「病院までご一緒しながら探しましょう」

さりげなく言う清楚で爽やかな若い女性の申し出に驚き感動を覚えた。

 若い人の足はスピードがある。私はついていくのは精いっぱい。歩きながら会話を交わす中で夕陽丘短期大学食物栄養学科を2023年3月には卒業して兵庫県の保育園に栄養士として就職が決まっているそうだ。

病院に無事に辿り着き、診察が終わるまで待つと申し出てくれたのは高齢の私が、無事に帰宅できるか心配だったのだろう。 正直な気持ちは待っててもらいお食事を御馳走したいと思ったのだが、病院玄関のガラス戸に映る若い彼女の生きる姿勢の美しさに心を打たれ、何時かまたお会いできる日があればと・・・願いながら。続く

吉田公恵

 

error: Content is protected !!